ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

2026年8月1日、よく晴れた夏の日。 DAYZOOでは、ヤギたちが登ることのできる「緑の屋根」をつくるワークショップを開催しました。 〜プロジェクトのはじまり篇〜では、ヤギ獣舎に「緑の屋根」をつくることになったきっかけを紹介しています。 そもそも、どうしてヤギの獣舎に登れる屋根が必要なのでしょうか。 ワークショップは、DAYZOOの瀬島園長による、そんなヤギのお話から始まりました。

#環境のこと

#ヤギ

ヤギが登る屋根には、理由がある。

「ヤギって、高いところが好きなんでしょうか?」

 

答えは、NO。

ヤギが高いところに登るのは、厳密に言えば、高い場所が「好き」だからではありません。高いところから遠くまで見渡して群れを見守ったり、万が一、敵に見つかったときに安全な場所へ逃げやすくしたり。野生で暮らしていたころから続く、ヤギ本来の「習性」なのです。

 

動物園でも、ヤギがこうした自然な行動をとれる環境をつくることで、運動不足を防ぎ、ストレスを減らすことにつながります。このように、動物たちが本来の行動をとれるよう環境を工夫し、暮らしを豊かにすることを「環境エンリッチメント」と呼びます。

 

DAYZOOのヤギ獣舎につくられた、ヤギが登って過ごせる屋根も、そのひとつ。そんなヤギの習性や環境エンリッチメントについて、瀬島園長が紙芝居を使ってわかりやすく教えてくれました。

ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

では、その屋根の緑は、どのようにつくっていけばいいのでしょう。ここからは、屋根緑化を手がけたイケガミさんにバトンタッチ。これまでに手がけてきた施工事例を見ながら、屋根を緑化する技法や、今回使われている芝について教えてもらいました。

ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

芝って、こんなに土がついているんだ。

説明を聞いたあとは、いよいよ実際の芝に触れてみます。
今回屋根に使われている芝は、実際に生えている芝を、根から土の層ごと切り取って運んできたものです。
シート状になった芝を持ち上げてみると、見た目以上にしっかりと土がついています。

参加した子どもにワークショップのあとで感想を聞いてみると、「あんなに土がある芝だと思っていなかった」と驚いた様子。普段何気なく見ている芝生も、持ち上げて裏側を見てみると、地上に見えている緑だけではないことがわかります。

親子で芝のシートを運び、施工を担当するイケガミのスタッフへ一枚ずつ手渡していきます。受け取ったスタッフは、声を掛け合いながら屋根の上に芝を敷いていきます。芝の手触りや重さを感じながら、みんなで緑の屋根をつくっていきました。

ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

芝に水をあげてみよう。

続いては、屋根に敷いた芝がしっかりと根を張るための水やりを体験します。

この日の池田市は、朝から夏らしい暑さ。屋根の上へ向かう前に、まず確認したのはホースの中の水の温度でした。暑い日にホースの中に溜まっていた水は、太陽に温められて熱くなっていることがあります。そのまま芝にかけてしまうと、芝を傷めてしまうことも。十分に冷たい水が出てくるのを待ってから、水やりを始めます。


そして、水やりにもポイントがあります。

芝に向かって直接水を当てるのではなく、一度空に向かって水を上げ、雨が降るように広く撒いていくこと。

台の上に登り、教えてもらった通りにホースを構えて挑戦します。

一緒に参加した保護者の方にもホースを渡してみると、これがとても上手。聞けば、普段から園芸をしているそうです。きれいな弧を描いて水が降り注ぎ、近くで見ていた人のメガネまで濡れてしまう場面も。

暑い日だったこともあり、芝だけでなく人にも水がかかるくらいがちょうどいい。水しぶきが飛んでくるたびに、現場では楽しげな参加者の声が響きました。

ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

毎日の水やりは、どうするの?

水やりを体験しながら、参加した保護者の方からこんな質問も。

「これからも、毎日ホースで水を撒くんですか?」

実は、新しいヤギ獣舎の屋根には、芝へ自動的に水を届けるための設備が入っています。穴のあいた水管が設置されていて、普段はそこから芝へ水を撒くことができるシステムがあります。

実際に自分たちでホースを握ってみたからこそ、その後、この緑をどうやって維持していくのかにも興味が湧いてきます。屋根を緑にして完成、ではなく、芝も生きもの。水をあげ、育てながら、ヤギたちが過ごす環境を維持していきます。


水やりを終えたところで、いったん冷たい飲み物を飲んでひと休み。

この日は暑さ対策としてスタッフがホースで周囲にも水を撒いていましたが、これが子どもたちには意外な人気スポットに。水に濡れた髪も、夏の日差しですぐに乾いてしまいます。

ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

屋根に登ると、動物園がちょっと違って見える。

ひと息ついたあとは、改めて新しいヤギ獣舎を見て回ります。
屋根の上は日差しこそ強いものの、風がよく通ります。「暑いけど、風が通ると気持ちいい」そんな声も聞こえてきました。

そして、屋根の上から眺めてみると、いつもの動物園とは少し景色も変わります。見晴らしもよく、ヤギ獣舎の向かいの獣舎で暮らすワラビーやエミューの姿もよく見えました。


「こんなに近くで見たのは初めて」

新しくなった獣舎では、動物との物理的な距離が近くなり、その姿も以前より見つけやすくなっています。

今回参加してくれた親子は、リニューアル前の五月山動物園にも時々遊びに来ていたそう。

以前の五月山動物園を知っているからこそ、新しくなった園内を歩きながら、「前の動物園もよかったけど、新しい動物園もいい感じやね」という感想も。
動物との距離が近く、姿が見えやすくなったことも、DAYZOOを歩いて感じた変化のひとつだったようです。

ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜
ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

緑の屋根から、ヤギの暮らしを考える。

芝を持ってみる。屋根に登る。水を撒いてみる。


ひとつひとつは、とてもシンプルな体験です。

でも実際にやってみると、芝の下には想像以上に土があることや、水の温度ひとつにも気をつけなければならないこと、その緑を維持するための仕組みが屋根の中につくられていることなど、外から眺めているだけではわからなかったことが見えてきます。
そして、その屋根を登っていくのは、ヤギたちです。ヤギが本来持っている「高いところに登る」という習性を生かし、できるだけ自然な行動ができる環境をつくる。そのためにつくられた屋根を、植物を育てながら維持していく。

 

今回のワークショップは、屋根の緑化を体験すると同時に、動物園で暮らす動物たちにとって「心地よい環境ってなんだろう?」と考えてみる時間にもなりました。

そして現在、緑の屋根では、ヤギたちが芝の上を歩いたりする姿が見られるようになりました。

ヤギのおうちに「緑の屋根」をつくろう〜ワークショップレポート篇〜

[現在の緑の屋根で過ごすナナユウ(撮影:瀬島園長)]

次にDAYZOOを訪れたときには、ヤギだけでなく、その足元に広がる緑にも、ぜひ注目してみてください。

前篇(プロジェクトのはじまり)の記事はこちら